いこの友人は言わずもがな変な人が多い。
カナダでワーホリ中に出逢ったtomikoもその一人だ。変な人仲間のスズキチとカナダで出逢い、その友人がtomikoだったのだ。
彼女は見た目は大学生のように見え、話し方もおっとりとしていて鈴が鳴るような綺麗な声で話す。
tomikoのオーラは何色かと聞かれたら、間違いなくキキララ系パステルカラーだろう。
そんな彼女は警戒心の強い妖精のよう。
彼女は世の中のいろいろな事に裏があると見ていて、ある時は陰謀論にハマっていて「飛行機雲は毒ガスが目に見えているものなんだ、あれはケムトレイルというんだよ。」といこに教えてくれたりした。
厭世的な性格でLINEの既読システムを極端に嫌ったり、Facebookも恐ろしいのでやらない、となかなか警戒心が強い。
かと言って変なところで肝はどっしりと据わっていたりして、即興の漫才をふられても恥ずかしがることもなく、難なくこなしてしまったりするのだ。
パステル気質と相反した超人素質を持っていてそれがまた魅力でもある。
笑いのセンスも人とは一線を隔しており、一般人にはわからないところでツボに入るらしく、しかも本当に「たまらん!」と言った様子で笑うので、いこはその幸せそうなツボり顔を見ると心底嬉しくなってしまうのだ。
そんな彼女も素敵な男性と出逢い、結婚する。
余興のクセが…すごい………!!
いこ、スズキチ、旦那わさお君の共通の友人でもあるtomikoの結婚披露宴にみんなで参加した時のこと。
和やかに宴は進行し、余興の時間に。
するとおもむろにtomikoは立ち上がり、同じく妖精のような友人とマイクの前へ。
凛とした表情の二人。その手には、なんとオカリナ…。
そしてtomikoパステルワールドが始まる。
tomikoの声色に似たオカリナのヒョロロー♪という音が会場全体に響き渡る。
…いこ達はtomikoの表情を見つめる。
「何を………企んでいる……?」
至って真剣な面持ちの二人。これは………ウケ狙いでは……どうやらないようだ………。
いこ達のテーブルはご親切にもアリーナ席。
いこ達以外の新郎新婦友人はどちらかと言えば真面目に演奏を聴いている。
その温度差やシュールな雰囲気に堪え切れず、とうとう爆笑してしまう。
それでも清く正しくパステルズの演奏は続く。
しかし爆笑を続けるいこ達につられ、とうとうtomikoもツボってしまったらしい。
あの「たまらん」顔をしながら、それでも演奏を続けようとする根性。
いこはtomikoのたまらん顔が出た事によって更に嬉しさとおかしさが込み上げ、結局最初から最後まで笑いっぱなし。
その横でもう一人の妖精は、芯の強い心でしっかりと演奏をこなす。
きっと学生時代クラスの学級委員長だったのだろう。
オカリナの演奏なんてまったく聴いてなかった。
ひたすらそのシュールな磁場に身を委ね爆笑していた。
tomikoの後ろではハズバンドが温かい眼差しで微笑んでいたとさ。
おしまい☆