2018年1月下旬のある週末、群馬の友人とみこを訪ねた時のこと。
群馬のとあるクセがすごい酵素風呂に行く計画を立てていた。
そこの酵素風呂の店主のおばちゃんも、話を聞く限りなかなかの変な人のようだったのでブログのネタになるなと楽しみにしていた。
しかし稀にみる関東の大寒波の影響で酵素風呂の水道管が凍結したらしく、酵素風呂計画は中止を余儀なくされた。
そこで友人とみこは、以前通りがかった怪しいスポットを見に行ってみないかといこに提案してきたのだ。
とみこの説明によると、とにかくとても怪しい人が住んでいそうな建物があり、以前通りがかったが謎はいまだに解明されていない。
いこに是非鑑定をお願いしたいということ。
詳細がわからない為、想像も出来ないのだがいこも認める変な人のとみこが感知するのであればそれは行ってみるしかないのだ。
超絶怪しい要塞が突然現れる
とみことハズバンドと3人でその怪しい要塞を訪ねてみることにした。
何もない道をひたすら走り、田舎道ドライブを楽しむ。
いこは北海道の超田舎に育ったため、田舎道を走るととても癒される。
景色を楽しみながら山道を走ること少々、突然毒々しい色彩ととてつもない自己顕示欲の塊としか表現できない要塞のような建物群が現れた。

これは……!
とても怪しい!!
でも突然鉄砲玉が飛んでくるような危険なにおいは感じられず、迷わずに突撃する決断をした。
建物群は小屋のような建物が全部で4つ程。その全てがガラクタのオブジェで飾られている。
その建物群の敷地内に入る為の入口には、トーテムポールのようなものが立っている。

中心は木で出来ていて顔のペイントが描かれており、その脇には翼を広げるようにたくさんのスキー板の装飾が施されている。
トーテムポールに耳があるかは知らないが、耳にあたる部分には車のサイドミラーが両脇からにょきにょきと生えている。
髭のようなものは、なんだろう?黒いコイルの束のようなものだ。とにかくいろんなガラクタから成り立っているトーテムポールだ。
良識のある人間であれば、入口の魔除けトーテムポールを見た瞬間に
「うん。近づかない方がよさそうだ」と賢明な判断する事だろう。
しかしいこは諸々のオブジェから並々ならぬカマッテちゃんオーラを嗅ぎ取ってしまうのだ。
いざ突撃。
それは芸術家の城であったのだ。
敷地に踏み込むも人の気配は今のところない。
ただ、ラジオか何かが流れているのか音楽が聞こえてくる。
敷地のほとんどの建物は屋根だけの壁のない建物。
そこにたくさんの芸術作品が完璧な配置で置かれているようだ。
絵であったり、トーテムポールの子分のようなオブジェや、化粧品メナードの看板、たくさんのタイヤがろっ骨のような按排で宙に吊り下げられて並んでいる。

ピアノか何かの鍵盤が壁一面にかけられているところもある。とにかく雑多だがエネルギー値はとても高い。
敷地内に踏み込んだものの、勝手に物色するわけにはいくまい。
と、突然にひとつの建物から勢いよく飛び出す何か。
しまった!!読みが甘かったか!!鉄砲玉でも飛んできたのか!!
と、思うとグレーの大きな犬だった。
なるほど。こーゆう要塞には番犬は必要だろう。
犬は好きだが、下手に近づくとコテンパンにされかねない。
犬はひとまず置いておくことにする。

いこは唯一壁のある、小屋のような建物に近づき、大きな声を出す。
「ごめんくださーーーい」
ラジオはやまない。
もう一度
「ごめんくださーーーーい。見学させていただいてもいいですかー??」
すると音楽が止まる。んん?もしかしてラジオじゃなくてギターかなんか弾いてた??
すると小屋の中でようやく人が動く気配が。
ガチャリとドアが開き、おじさんが現れたのだ。
おじさんは予想通りのおしゃべり好きだった。
出てきたおじさんは予想に反してきちっとした身なりであらわれた。麦わらで出来た中折れ帽を被り、暖かそうなカーキのジャンパーの前は閉めずに中には蛍光イエローの発色のよいジャージのようなものを着ている。
肌つやもよく、小ぎれいなおじさんだった。
おじさんはこの城についてたくさんの説明をしてくれた。
昔からおじさんは焼き物をやっていていろんな工房で修行していたこと。
リストラに遭い、この要塞の土地を買い、犬をもらい受けて自分の城を築いたこと。
この敷地内にも大きな釜を自分で作ったが大震災によって崩れてしまい今は復旧作業中だということ。
そして敷地に飾られている様々なものは働いているスクラップ工場からもらい受けて作品を作っていると。
脚で回すろくろ、手で回すろくろ、石うすを彫刻したものなど、たくさんのモノがある。
おじさんはひとつの立体的な絵を示してこう言った。
「これはピカソと同じキュービズムなんだよ」

肋骨のような宙づりタイヤは現在制作中の恐竜の胴体を模しているとのことで、顔や足、爪などは焼き物で制作するという。
いこは、ここに人は来るのか?ここは有名なのかを尋ねるとおじさんはこう答えた。
「今の時期はなかなか人は来ないけど、暖かくなってきたら花桃がこの道路の先にいっぱい咲くんだ。だからお花見の帰りに寄ってくれる人もいるよ。夏はバーベキューの設備でも貸し出そうと思ってるんだ。」
いこはおじさんの事が好きになった。
おじさんはとても純粋で孤高の芸術家であったのだ。
ガラクタ芸術を見て想起したもの
いこは芸術のことはわからないが、好きだなと思うものと理解できない作品は分けられる。
岡山にいたときに直島の家プロジェクトという現代アートの施設で働いていた時の事。
そこには大竹伸朗さんというアーティストのはいしゃという建物があって、いこはその作品が好きだった。
大竹伸朗さんも拾ってきたものや既にあるものを組み合わせて新しいアート作品を作るという作風を持つ人であった。
おじさんの作品はそれに通じるな、と。
その他、宇野のチヌをつくった淀川テクニック、とかそーゆーのに通じる感じ。
立体的なスクラップブックのようでもある。
丸いアンテナに麻雀パイで顔を作ったオブジェが個人的にはお気に入りになった。
恐竜が出来上がる頃にまた遊びに来たいな。
【名もなき場所だがgoogle mapにおじさんと犬】
いこは連れて行ってもらったのみで土地勘が全くないので説明ができないが、どちらにしろ名もなき場所だ。
とみこに大体の位置を調べてもらい地図に矢印を入れてもらった。
するとなんとストリートビューにおじさんと犬が映り込んでいるという奇跡笑
因みに犬はとてもおとなしく人懐こい可愛い犬だったよ。


