【変な人日記6】誰の自転車かを把握していることを誇りに思う駐車場警備員




わさこが東京に移住して3ヶ月。

パート先の駐車場の警備員のおじさんがめんどくさい。

年の頃は40代後半から60代前半か。連日の炎天下の中での仕事でまっくろに日焼けしていて、かつ前歯が半分程無い為年齢を特定することが難しいタイプだ。滑舌が悪く空気がぷすぷす抜けたような話し方をする。

わさこがそこで働き始めて1ヶ月くらい経った頃、いつも昼休みに家に戻るわさこの行動を把握した警備員のおじさんがわさこの自転車を出しやすいように一番端に移動しておいてくれるようになった。

自転車置き場は混んでいて毎回自転車を出すのが大変なため、すごくありがたい。

それから顔見知りのようになり少しそのおじさんと話すようになった。

が、そのおじさんとの距離感が少しめんどくさくなってきたのだ。

わさこの姿を見つけては寄って来るおじさん。

わさこが朝の出勤、昼の中抜け、昼戻り、からの夕方の退勤時に自転車の出し入れをする時になると寄って来てはちょっかいをかけてくるようになった。

普通の世間話ならまだしも、毎回「これは昼勤務の誰の自転車で、あれは夜勤の誰の自転車だ、自分は全部自転車を把握している」という趣旨の自慢にならない自慢話。

そーでもなければ、わさこの自転車を寄せてくれたのはいいものの、それを冗談で持って行こうとするジェスチャーなど、仲良くなりたい感じのオーラをびしびし出してくる。

でも昼休憩は1時間と決まっているからゆっくり休みたいし、仕事が終わったら一刻も早く家に帰りたい。

おじさんとの雑談に使う時間は1分たりとも持ち合わせていないのだよ、わさこは。

だから、なるべくおじさんに話しかけられないように素早く自転車の出し入れをするのだ。

ある日、わさこの自転車にまたがるふりをして「これで俺の家帰ったら何時間かかるかなー」と、かまってちゃんな言動をしていたので「どこから通ってるんですか?」と、仕方なしに聞いたところ千葉の松戸だという。

わさこは関東の地理はよくわからんのでどんだけ遠いのかは不明だが、少なくとも県をまたいで東京まで来ているというのは、まぁご苦労さんなこった。

今googleマップで大体の距離を見てみたら、車で1時間ちょいかかるらしい。

都心のビジネス街に2時間とかかけて通勤するのはわかるけど、駐車場で従業員にちょっかいかける為に1時間以上かけて来ているとは、重ね重ねご苦労なこった。

その淡い恋心の行方は…

おじさんはどう考えても若いときもモテなかっただろう。

話しかけてくるくせに目を見ると、つぶらな瞳をしばたかせ目をそらしたりするのだ。

その感じがいっそうめんどくさい。

恋する乙女のようなつぶらな瞳は傷つくのを恐れている。

別にわさこに恋をしているのではないだろう。

ただ、日々の業務の中に楽しみを見出したいだけなのだ。

わかってる。けど、わさこはもうこれ以上距離を縮めるのは嫌。

おじさん、わさこはあなたの気持ちには応えられない。

ある時、30代後半の同僚G(男性)になんとなしにそのおっさんの話をした。

「なんか、駐車場の警備員さん、わさこが出勤するとものすごく嬉しそうに話しかけてくるんですよねー。めんどくさくてー。」

すると、同僚Gは「いや、俺にもけっこう話しかけてくるよ!」

………いや、わさこは別に一人だけ特別扱いされてるとは思ってなかったけどさ、なんかこの感じ恥ずかしいわっ!!自意識過剰みたいな感じ、いや別にそーゆーんじゃないんだけどさ。

勘違いしてるのはわさこ、みたいな展開…。いや、なんか恥ずかしいわっ!!!

それでも、やっぱりおじさんはめんどくさく、わさこは極力立ち止まらずに「お疲れ様でーす。」と颯爽と自転車で風のように去っていくのだ。

性格悪いですかね、わさこ。