どこの職場にもいる、悪い人ではないけれど少し厄介な人達。
【変な人日記シリーズ】で数々の変な人を紹介してきたが、灯台下暗し。
職場に二人、強烈なキャラクターの変な人が、いた。
今回はそのお二人を紹介させていただこうと思う。
ゴシップ大好きな水木しげるキャラクター系女子。
いこが、この職場に入って初めて違う部署の人から親しげに話しかけられたのがこの人、小室さんだ。
水木しげるが描く漫画のキャラクターに出てきそうな顔立ちは、もうデフォルトでゴシップ好き、詮索好きとわかる。
真っ白くて透き通った肌は40を過ぎているとは思えない。
猫っ毛の髪の毛は長く、腰あたりまであり、うしろで三つ編みにしてある。
とてつもない早口でまくし立てるようにしゃべる。そのトピックは職場のゴシップと自分の待遇への不満。
それをしゃべり散らかす事が目先の人生の目的のようだ。
「ねえ、いこさん、知ってる?」と話しかけてくる顔は、情報を持っている事を自分のアイデンティティーとしているのを伝えている。
話が鬼のように長く、気が遠くなりそう。しかも早口。いこに向けて浴びせられるたくさんの文字は、いこの体にぺしぺしと当たっては周りにぽとぽとと落ちる。その文字達が耳に入ることはないのだ。
いこが「はぁ」とか「へぇ」とか「ほぉ」とか適当な返事しかしていないのにも関わらず、彼女の体内に溜まった一定数の文字を吐き出さない限りは解放されない。
仕事が終わり、ロッカールームで少し休んでいる時なんかに遭遇すると、もう萎える。
疲れてへとへとで、すぐにでも家に帰ってゆっくりしたい時まで、他人の表情を読み取ることなくおしゃべりを開始する。
ある時は10メートル先に小室さんを見つけ、避けるように別の通路を通ろうとしたら、いつの間にか後ろに立っていて声をかけられる。いこを見つけるといつも必ず追って来て怒涛のおしゃべりを開始するのだ。
毎日同じことを言ってくる。「いこさんの部署、大変ねぇ。最近どうぉ?」
ネタがないかと手をこまねいているのだ。
忙しい時や疲れている時に遭遇すると、ダンジョンで敵に出くわした気分に、リアルになる。
野口さん系ネガティブ女子。
もう一人の変な人はいこと同じ部署の池野さん。
見た目はこちらも肌が綺麗でとても40を超えているとは思えない。
身長は150センチくらいの小柄で、きれいな顔立ちをしているが、表情には背負っているカルマが透けて見える。
毛量がえげつない。こちらも腰まである長い髪を縄(!!)のように編み、それをおだんごにしてまとめているが毛量がえげつないため頭にもう一つ頭が付いているように見える。もう呪いのレベルの毛量だ。
業務中は衛星帽を被るのだが、それを被った池野さんの頭はおだんごのせいで後ろに長くエイリアンのような形をしている。
同じ部署の同僚、森下君はいつもいこに「池野さんはとりあえず髪の毛切った方がいい。あの髪に怨念を感じる」と不満を漏らす。
ちびまる子ちゃんの野口さんのような雰囲気をまとっていて、低い声でぼそぼそとしゃべるが、ただでさえ小さな声はマスクを通すとほとんど聞こえない。
何度も聞き返すのも気が引けるので3回聞いてもわからなければ、こちらもぼそぼそと聞こえるか聞こえないかの声量で「そうですね」と同意することにしている。
機嫌がいい時は低い声で笑うが、いったん何かのスイッチが入って心を閉ざすと死んだ魚の目になるという。
いこにはそのスイッチの切り替わりがわからないが、まわりをよく見る敏感な森下君はそのスイッチが入る瞬間がわかるらしい。
基本がネガティブ思考で「私なんて戦力外ですから」とか「私だけ仕事を教えてもらえないんです」とかをよく不満を口にしている、が最初こそ「そんなことないですよ」などとフォローしていたみんなも、その不満に対してはスルーするようになった。
衛生管理が大事ないこたちの部署で池野さんは飛びぬけて衛生観念が強い。
なんでもアルコールを振りかけたり、常軌を逸した行動をする為、わが部署のパルプンテとして恐れられている。
一方気にならないところは全然気にならないらしく、がさつな一面もあり、いこ達は理解に苦しむ。
仕事を離れると普通の人に見えるが、仕事でのこだわりは強く、それを人にも強要する。
上司がこうして欲しいということも納得いかなければ無視して自己流で業務をすすめる厄介な面もある。
ある時は、男性上司がショートメールで業務連絡をした際、他意無く絵文字を入れたところものすごい勢いで「気持ち悪いのでそのような絵文字は二度と入れないでください」と返信がきたという。
プライベートはベリーダンス、アクセサリー作りと各方面に忙しくしている様子。
離婚歴あり、メンヘラの年下と結婚していたらしく、その闇は深い。
これだけを読むとすごく嫌な人間のように思えるが、仕事はミス多めだが一生懸命、プライベートでの趣味の話をすると目が輝く可愛いところもあり、そのギャップがまた、池野さんをなんだかんだ嫌いになれない理由だったりするのだ。
結局愛おしい変な二人。
そんな変な二人は同い年くらい。厳密な年はわからないが42~43だろう。
共通点は同年代。髪の長さ(毛量は全然違う)。実家暮らし。独身(片方バツイチ)
そして二人とも自分がまさか「変な人」認定されていると思っていない。
お互いに「あの人は変わってるからね…」と微妙な距離感。
ベクトルの違いはあれど、どちらもかなりの変人だ。
時々二人には辟易するが、でもいなくなったらつまらない。
いこの日々を彩る愛おしき職場の変な人達なのだった。