【変な人日記19】黒マスクの枯れないミステリアスレイディー

【変な人日記】黒マスクの枯れないミステリアスレイディー




どうも。いこです。

今回はいこの職場の変な人について書いてみました!

それでは、変な人ワールドへ!

職場に史上最強烈のミステリアスレイディー現る

いこの職場になかなかパンチの効いたおばちゃんがパートとして入ってきた。

寺田よしこさん(仮名)、58歳だ。

寺田さんに初めて会ったのは、春。花粉が飛ぶ季節だった。

それはそれは衝撃的なデビューだった。

クイーンオブ奇抜との衝撃の出会い

ある日、いこは事務所でパソコン業務に追われていた。

事務所の入り口を背にパソコンをカタカタやっていた時のこと。

ふいに強烈な香水の匂いが鼻をつく。

反射的に振り返ると、そこには見知らぬ女が立っていた。

それが寺田さんとの出会い。

彼女は黒マスク姿で現れた。

ただでさえ、いこにとって黒マスクをする人物は要注意人物認定、変な人センサーがビービー反応するのに、彼女は首から下も、否、頭から足の先までかなり奇抜なセンスの服装をまとっている。

春のとても暖かい日、白のレースのブラウスを着ている。

肩の部分が開いているタイプのやつだ。

そして何やら目にやかましい柄柄したスカートを履いている。

いこは『肩!!そして白ブラウスに黒マスクて!!!』と、心の中でツッコむもいこも大人だ、顔には出さない。多分。……いや、出てたかも。

いこの職場はカジュアルな私服でもいいことになっているが、もちろん節度持って常識の範囲内での話だ。

「今日からよろしくお願いします!寺田と申します。」と挨拶され、いこも自己紹介をする。

髪は暗めの茶色でショート。兵藤ゆきのような髪型をしている。

年の頃は服装からすると40後半…?いや肌の感じは50代いってるな。

性格はまあ、快活でおばちゃん特有の社交的な感じ、という印象。

上司が来て対応を始めたのでいこはパソコン仕事に戻る。

寺田さんは早速レクチャーを受けているがいこがいつもパソコンを使うデスクから後ろ姿が見える席に通されていた。

先ほどは至近距離から上半身から上しか目がいかなかったが、全体を見るとまた奇抜。

レースの肩開きブラウスに気を取られていたが、先ほどスルーした柄柄スカートにはよく見ると何やら文字が書かれている。

目を凝らすと……   …白鵬………???

白鵬ってあの白鵬?相撲の?そんなスカートどこで買うんだよ。

確かによく見るとなんだか相撲的な柄というか雰囲気の生地。

そして、更には足元は看護師さんが履くようなナースシューズを履いている。

しかもピンク!しかもかなりの厚底。いかがわしいコスプレじゃないんだから!!とツッコみたくたくなるような。

いやいや全体的なちぐはぐ感がすごいぞ。トータルコーディネートどうなってんだよ。

何だかすごいものを見た衝撃でいこは感動にも似た感情を一人味わっていた。

そんな出逢いだった。

数々の浮き名を流し、職場の風紀に波風立てる

衝撃の出会いから2年。

寺田さんは着々と職場に溶け込み、地位を確立していった。

今では勤務時間中に会社のパソコンでネットショッピングに勤しみ、カニや高級シャンプー、アパホテルのカレーを箱買いし、職場に配達される始末。

箱買いしたアパカレーは、職場で気に入った人に配っている。

因みにいこもたまにいただく為、もはや買収されている。

寺田さんの悪口は言えないのだ。

そして相変わらずのファッションセンスは健在。

最近は謎にチマチョゴリを着てきたり、と思えばトガった若者でも着るのに勇気がいる、全体にカタカナで「アディダス オリジナル」と大きな文字でしつこいくらいに繰り返し書かれたパーカーを着てきたりともはやカジュアルの定義から問いたくなるような恰好で現れる。

上司も、寺田さんより歳下の男性ということもあり、なかなかたじたじの様子だ。

そんな中ロッカーが近かったこともあり、寺田さんといこは少しずつ距離が縮まっていった。

それにつれてロッカーでは寺田さんのプライベートに関しても聞くことが増え、いこは職場で誰よりも寺田さんに詳しい者のひとりにいつの間にかなっていた。

寺田さんのリア充プライベート

寺田さんは、現在58歳。独身。離婚歴なし。

何と彼氏が2人いるという。

彼氏Aは70歳を越えていて交際歴がかなり長い。

彼氏Bが本命。歳は寺田さんと同い年。若い頃婚約していた仲だが家族の反対にあい破局。

その後同窓会にて運命の再会を果たして燃え上がり、彼氏Aという存在がいながら二股という流れになってしまったそうだ。

彼氏をそれぞれ間違えないように携帯の着信音を本命の彼氏Bをラジオ体操第一、サブ彼氏Aをラジオ体操第二で分けているという。

…逆にややこしくないか…??

ある日のロッカールーム、寺田さんと一緒になった時に、寺田さんは特別なものを見せるようなしぐさで胸元に止められた名札を外し、裏側を見せてくれた。

そこには本命の彼氏Bの写真が。

恰幅のいい中年男性。本来年上好きのいこが見てもダンディズムとか色気とかは感じられない、極めて普通のおじさん。

寺田さんは嬉しそうにいこの顔を覗き込み、「ねっ!?」と謎の同意を求める。

いや、ねっ!?って知らんし!!!

ピンクのナースシューズの悲劇

また別のある日、いこはロッカーでついに耐え切れなくなり、今ではトレードマークになっているピンクのナースシューズに触れてしまったのだ。

いこ「その靴、可愛いですよね(もちろんお世辞)。いつも見ちゃいます(これは本音)!」

すると気を良くした寺田さんは「まとめ買いしててまだあるから、あげる!」といこに有難くもオファーしてくれたのだ。

いこは突然のことにすぐに言葉が浮かばず、少し黙った後にあろうことか「もらうの悪いし、お金出しますよ」と言ってしまったのだ。

するとあっさり「じゃ、500円でいーよー!」と請求され、お昼ご飯さえも節約しているいこの貴重な500円硬貨をかっさらっていったのである。

悲しいが、悪いのは断れなかったいこだ。寺田さんは悪くない。

寺田さん。ああ寺田さん。寺田さん。

ある日、変な人好き仲間の友人とみこに、衝撃の奇人寺田さんについて話してみたところ、大いに興味を持ってくれた。

かなり詳しく寺田さんについての聞き取りが行われ、最後にとみこが一言。

「結局さ、寺田さんモテ女風だけど綺麗な人なんだ?」

……………………………

いこは、寺田さんにピンクのナースシューズを売りつけられた時とちょうど同じだけ黙ってから、

「そういえば!アパカレーあるけど食べる??」と話題をそっと変えたのだった。