掃除機が壊れたら…箒(ほうき)生活始めよう。練馬の老舗 そうこう箒本舗紹介。

掃除機が壊れたら…-箒ほうき生活始めよう-練馬の老舗-そうこう箒本舗紹介




掃除機が…壊れたーーーーーー!
新しい掃除機買うかぁ…

あ!そういえばいつだか素敵な箒(ほうき)屋さん見かけたような…
ちょっと行ってみよか。

ある日、旦那わさお君と同じコンセントから布団クリーナーと掃除機をそれぞれ同時にかけていたところ、

突然掃除機がご臨終を迎えた。

スイッチを入れてもうんともすんとも言わない。

この掃除機も購入してから3~4年というところでそんなに経っていない。こだわって買ったものではないけどこんなに早くお別れする日が来ることになろうとは…。

2歳と4歳を抱える我が家。毎日掃除機をかけないとどうにもならない。

さて困った。掃除機買い替えるのも大きな買い物になるし、今すぐ必要だけど買い替えるなら吟味したい。そして大きな買い物を吟味する時に費やすエネルギーも相当なもんだ。

そんな時、以前通りかかったことのある素敵な雰囲気の箒屋さんをふと思い出す。

そして箒を手に入れたお話。

この記事ではそうこう箒本舗という素敵な箒屋さんを紹介します。

練馬区豊玉南にある老舗箒屋【そうこう箒本舗】

そうこう箒本舗外観

そうこう箒本舗のある場所

所在地: 〒176-0014 東京都練馬区豊玉南2丁目15−26

営業時間:10:00~19:00

電話: 03-3993-7257

※ネット販売などはしておらず、そうこう箒はここでしか買えない!

練馬駅から徒歩で15分ほど。環七から少し入ったところにええ雰囲気の外観が見えてくる。

素敵な外観もさることながら、中に入ってみるとまた圧巻。所狭しといろんなタイプの箒がディスプレイされている。

店の奥から出てきた語尾に独特なイントネーションを持つ物腰柔らかな店主が接客してくれる。

今回私が求めていた箒はフローリングと畳どちらにも使えるもの。

店主に聞くと棕櫚(しゅろ)の箒は静電気を除去しながらチリを集めるので、埃を舞い上がらせることなく室内用に適しているという。

そして何より棕櫚帚はめちゃくちゃ長持ちするそう。

店先に置いてあったそうこう箒本舗のチラシにはこうある。

摩耗が少ない棕櫚帚は「一生に三本」と言われる程に永く使うことができます

そうこう箒本舗

一度売ると長持ちし、売り手が儲からない為にあまり流通しなくなったという歴史があるらしい。

店の奥から棕櫚の箒を2本出して来て説明をしてくれた。

下の写真の棚に立てかけてある2本の棕櫚帚。

左の箒は100年もの!右のは50~60年経っているという。

100年ものはさすがに棕櫚の皮独特の網目状の部分がほぐれてはいるものの試し掃きさせてもらったところ、へたれている感じもなく全然現役で問題ないくらいの頼りがいある掃き心地。そうね、人間にして50歳。酸いも甘いも嚙み分けた、いぶし銀の風情かな。

50~60年ものに関しては網目状もまだしっかりあり、こちらも人間にして働き盛り30代半ばといった様相だった。

いこ
人間に換算するなし

一年に三本と言われてもなかなか想像がつかないものだけど、実際に時を経た現物を目の当たりにすると

これは説得力ある。

棕櫚は水に付けてもほとんどカビないという。棕櫚の皮自体に含まれる油分が水を弾くらしく、これが水に強いと言われている所以。

そうこう箒の商品が出来るまで

老舗そうこう箒本舗は50年の歴史があるという。

店主は二代目で昔は問屋で小売りはしていなかったそう。

現在もネット販売などはしておらず、ここにしかない箒として販売をしている。

店主は私が購入した箒を丁寧に包みながらぽつぽつと箒作りについてお話をしてくれた。

製作時間について

店主に一本の箒を作るのにどれくらい時間がかかるのかを聞いてみた。

私が購入したものは頭(箒部分)は横幅25センチ弱、柄は出ている部分だけで60センチ、全長にして1メートルに満たない小ぶりなものだが、それでも6時間くらいかかるという。

もっと大きなサイズのものは更に時間がかかるだろう。

この製作時間は材料を組み立てて箒の形にするという意味なので、その前段階の棕櫚の皮を洗ったり、それを乾かしたりという下準備を含めれば更に時間がかかっているということだ。

こだわりについて

棕櫚の束をまとめるのに銅線が使われている。銅は金属の中では柔らかく柔軟性があり、植物との相性がいいらしい。ステンレスなどでも試してみたが強すぎて棕櫚に食い込み過ぎるという。ちょうどいい強さでテンションをかけると吸い付くようにまとまる銅線が棕櫚の箒にはぴったりの素材なんだそうだ。

その銅線は力のかけ具合が強す過ぎると切れてしまうらしく、これには熟練の技が必要なのだ。

最初はその銅線はぴかぴかしているが銅でできた10円玉と同じように少しずつ酸化して落ち着き、箒との見た目もなじんでくる。

箒の組み立て方もこだわりがあって、棕櫚の束を何束か組み立て箒にする時に、最初に床に当たる外側は固い束、内側は柔らかいものをつかうことで履き心地の良いものになる。

一般に売られている棕櫚帚もそこまでこだわって作られているものは手間もかなりかかる為、なかなかないらしい。

柄の長さと頭の大きさ(重さ)もバランスが大事。バランスが崩れると手首に負担がかかったりと使い心地もよくない。

同じサイズのものでも柄の太さや棕櫚の個性で全然掃き心地感じが違うことにびっくりした。5本くらい試させてもらったが、どれも微妙に掃き心地が違い、言葉では言い表せない絶妙な感覚でなんとなく自分の手にしっくりするものがあった。

モノづくりの奥深さを垣間見た瞬間だった。

弊社では棕櫚の個性を優先して、部材にあった箒を作ることを提案しています。自然の素材の特性を生かした箒は、おのずから一本一本違ってきます。一本一本が個性を持った箒、その個性は自然と人との共生、合作によって生まれます。

「そう思う、こう思う」人が一人一人違うように、一本一本小さな違いではありますが、個性を持った箒たちとの一期一会を楽しんでいただければ幸いです。

そうこう箒本舗チラシより引用

ここにしかない箒に魅了される人々

駅近でもないこのそうこう箒本舗にはどのような人が買いに来るのだろうか。

私は練馬区に住んでいて割と近所だったのでそうこう箒本舗の存在を知っていた。

通りかかるといつも神社の境内に入り込んだような静かな雰囲気で、お客さんで随時にぎわっているという様子はない為、どんな人が買い求めに来るのか聞いてみたところ、海外からわざわざここにしかない箒を求めてやってくると聞き驚いた。

そのほか神社やお寺でも長く利用されているという。

小学生なんかから自由研究で作っているところ見せてほしいと言われたりしないんですか?と聞いてみたら(私自身が作っている様子に興味があって見てみたかったのは内緒)、「たくさん来るけど全部お断りしてるんですよ~」という。

箒作りワークショップとかやらないんですか?と質問してみたけどそれもしないと。

ワークショップ開催されるなら絶対参加したいのになぁ。残念。

贈り物にもされる素敵な箒

先に述べたように一度買うと長く持つ為、何度も買いに来る人はいないのかと思いきや結婚祝や誕生祝、新築祝、事務所開きなど人生の節目にお祝いで箒を贈る人が増えているそう。

また箒には災いや邪を祓うという意味も籠められているため、大切な人の健康長寿、幸福を願う贈り物としても良い選択だと思います。

そうこう箒本舗チラシより引用

お祝いで何を贈るか考える時、誰かと被らないかと考えて悩んでいたけど箒を贈るなんてとても粋だし、そこに込められた意味もとても素敵。使ってみて感じる良さも伝えたい。

次誰かに何かを贈る機会があったら箒を贈ることにしようと思う。

ほうきの語源は「ははき」、箒持ちを「母気持ち」にかけたりもするという。

母の日に送ったらお母さん、喜んでくれるかな。

そうこう箒のお値段について

私がお迎えした一期一会の箒は12,000円。旦那に相談せず購入し、事後報告したら怒られた。

ただし、箒生活のメリットとそうこう箒の品質の高さを最強プレゼンする自信があったので一期一会の運命に任せて購入を決定した。

お値段はピンキリでサイズによっても異なってくる。すべて値段を確認したわけではないけど5,000円台からあったように思う。

面白いのが商品名がないからその型が少なくなってくると次に同じ型を作るためにサイズを測って作るんだそうだ。商品名がないってすごい。名前をつけると定義づけられるから、少しずついろいろ変わっていくものだからってことなのかな。名前にとらわれないこと。存在そのものの価値を感じること。なんか深い。

そうこう箒本舗のインスタで店主の世界観を垣間見れる

箒の購入を検討するにあたってそうこう箒本舗のインスタグラムを拝見してみると…、物語に紛れ込んだような素敵な世界観で生きていらっしゃるのがよくわかる。

インスタにも多数写真がアップされている店内の可愛らしく個性的な置物達は店主こだわりのコレクション。ポーズなどに意味があるらしい。それらを調べるのが趣味で、京都の窯元などに発注して年単位で待っては作ってもらっているという。

いいお値段するため、箒購入に二の足を踏んでいる方はまず店主のインスタグラムで世界観に浸ってみるといいと思う。

たまに箒作りの途中の写真なんかも上げられていて、どんな道具が使われているかや、製作過程を垣間見ることも出来るのでおすすめ。

箒生活をはじめてみて感じたメリット

今まで掃除機があるのが当たり前の生活をしてきて、掃除機がない暮らしを想像したことすらなかったけど箒生活を初めてみて思うことは全然掃除機なくても生きていける!!!ということ。

何よりも経済的。電気代節約。掃除機そのものにかかる費用もかからない!

掃除機にかかる電気代は、掃除機のタイプによって差がでますが、1日あたり約3〜6円、1年間で約1,818〜2,200円となります。

LooopでんきHPより引用

毎日掃除機をかけると年間で2,000円前後電気代が掃除機だけでかかっていることになる。

月に換算すると微々たるものかもしれないけれど、それを1年、5年、10年と考えていくと大きなお金になってくる。

掃除機はピンキリだけど1万円くらいからある。こだわればこだわる程高くなる。うちの掃除機は4~5年で壊れてしまったが、消費者庁が示す消費動向調査によると7年ほどで掃除機を買い替えるのが一般的な様子。7年で買い替えが必要としてその都度購入しなおすとしたら掃除機本体が1万だったとしても80まで生きるとして後40年。5万以上はかかってくる。ここに年間2,000円の電気代を40年分換算すると8万。80歳まで掃除機に関わる費用を計算すると15万となる。

一方、箒はいいものを買っても数千円で済み、棕櫚(しゅろ)の箒は摩耗が少なくながく使える。

一生に三本と言われているという。仮に5,000円という箒にしてはいいお値段で購入したとしても一生に3本で済むのならその合計は15,000円となり、掃除機ライフに比べてなんと10分の1となるのだ。

何もかも値上がりしている現在において、なるべくエコな生活を取り入れるのは生きていく知恵であると思う。

不思議だなあと思う。人々の生活は進歩しているのかもしれないけれど、生き抜く知恵を思うと自然と昔の生活に戻っていく。

「ない」には生み出す知恵をもたらす豊かさがある。と個人的には思う。

箒は時間を選ばない!掃除機のヘッドが入らない場所もすんなり。

箒を手に入れてから今まで見なかったことにしていた冷蔵庫と壁の間の埃を掃き出した。

掃除機にも細いノズルが別で売られていたりするが、長いものをわざわざ持っているおうちはどのくらいあるのだろう。

狭いところにストレスなくアプローチできるのは箒のいいところだ。

設置しているラックなどの下も埃がたまりやすく、かといって掃除機のヘッドが入らないので掃除する時はわざわざ位置をずらしてたりしたけど、それも不要。楽だ!!

マンション暮らしであれば、掃除機をかける時間を考えなければいけないけど、箒は時間を選ばない。

子ども達が寝た後に、静かに一日を掃き清めるのもまた乙ですよ。

エコで丁寧な暮らしをしているという満足感

お店に入って最初に店主が教えてくれたこと。棕櫚帚は床を履き育てる。ということ。

棕櫚帚は、フローリング・天然板床を育てる箒といわれています。

板床やフローリングを永い年月棕櫚帚で掃き続けることによって、自然の「つや」をゆったりと出して床やフローリングを守り育ててくれると云われます。

そうこう箒本舗チラシより引用

それを聞いた時、昔の人はいろいろなものと調和して暮らしていたんだなと思った。

何もかもがうまくいくように出来ているというか自然に沿った営みをしていたんだよなあと。

何とも言えない丁寧な暮らし。確かに掃除機はごみを吸い込んでくれるから掃き集めるようなことはする必要がなく便利ではある。けどね。箒生活始めてみて思う。掃いている時間そのものが何だか良き時間に感じられる。

箒買ったばかりで浮かれているだけかもしれないけど、地に足がついている感覚というか、何とも言えない満足感があるんです。

↑ 我が家のそうこう帚 ↑

そして家に佇む箒そのものの存在感がすごい。

そこにあるだけでその場の空気感を変えてしまう存在感がある。

箒生活まとめ

最後だいぶふんわりな感じになってしまったけど、始めたばかりの箒生活素敵な予感しかしない。

これからフローリングを掃き育て、棕櫚帚も育て、子も育て、自分自身も育てて豊かな生活していきたいと思います。

皆さんも箒生活始めませんか?